ナノテラスについて

 

当財団では2026年度より『3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(以下、ナノテラスと記載)』のコアリション参加を行い、今後10年間にわたり年200時間を限度として、助成者が助成テーマの研究を行うにあたってナノテラスを利用することを可能とする予定です。

ナノテラスは東北大学内にある光科学イノベーションセンター(以下、PhoSICという)が運営する国内既存施設の約100倍の光源性能を持つ世界最高クラスの放射光施設で、ナノレベルでの物質の機能・性能を可視化することができる施設です。

このナノテラスの軟X線は特定の元素の特定の電子状態、結合状態だけを選んで見えるという元素選択性が特徴です。また従来のSpring 8等と比較して軟X線領域で約100倍の輝度で、微量な試料や希薄な溶液中の反応中間体なども可視化することができる、また単に物質の「形(形態)」を見るだけでなく、「化学的性質(酸化数、配位環境、結合の種類)」を見ることができるのが軟X線分光の最大の特徴であることが知られています。

2026年3月の記事では試料内の不純物等の影響を適正化する技術が開発されるなど新たな可能性が広がっています。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2026031200875&g=soc

当財団の寄付元の長瀬産業は2024年6月に東北大学青葉山新キャンパス内に「NAGASE×東北大学Delivering next共創研究所」(以下、共創研究所という)を立ち上げ、ナノテラスをハブとする産学連携による研究活動を推進しており、放射光が持つ回析、透過、吸収など様々な特徴の中から顧客の素材に合った分析方法を検証・提案し、評価を行っています。この共創研究所のメンバーが当財団の事務局に加わり、PhoSICのコンシェルジュとともにナノテラス利用、データ解析等のフォローを行います。

ナノテラスの利用によって成果が期待できる分野・研究内容は下記の通りですが、書き尽くすことができません。そこで、研究助成金を受けることになった場合は、希望いただければ、ナノテラスが研究にもたらす可能性について共創研究所メンバーが確認することもできます。

分野 対応する
ナノテラスBL
具体的な解析手法と
期待される成果
有機合成化学 BL08U 手法: 大気圧・ガス雰囲気下でのX線吸収分光(XAS)や光電子分光(AP-XPS)。
(触媒反応、
反応機構解明)
(軟X線オペランド分光) 成果: 従来真空中(超高真空)でしか測定できなかった表面分析を、実際の触媒反応環境下(1気圧の水素や窒素中)で実施可能。反応中の触媒表面の酸化数変化や吸着種の挙動をリアルタイムで追跡し、反応機構論に決着をつける。
精密有機合成 BL07U 手法: 共鳴非弾性X線散乱(RIXS)やNanoESCA。
(電子状態解析) (軟X線電子状態解析) 成果: 分子内の特定の化学結合に関与する軌道電子の状態を詳細に解析。不斉合成触媒などの微妙な電子状態の違いを識別し、立体選択性の起源に迫る。
生化学・細胞生物学 BL14U 手法: 走査型透過X線顕微鏡(STXM)。
(細胞内元素
マッピング)
(軟X線イメージング) 成果: 細胞を薄切することなく、また染色することなく、細胞内の亜鉛や鉄などの金属元素局在を50nm以下の分解能で可視化。精子のDNA凝縮に関わる亜鉛の役割や、鉄代謝異常に関連する疾患メカニズムの解明に寄与。
高分子化学・材料化学 BL08W 手法: 小角・広角X線散乱(SAXS/WAXD)とX線吸収微細構造(XAFS)の同時測定。
(サステナブル材料) (X線構造・電子状態解析) 成果: バイオプラスチックやリサイクルポリマーの機械的特性とミクロ構造(結晶化度、配向)の相関を解明。SIPプロジェクト「サーキュラーエコノミー」でも活用されている実績あり。
創薬・構造生物学 BL09U 手法: マイクロ結晶構造解析(MX)。
(タンパク質構造) (X線オペランド分光/MX) 成果: 従来の光源では解析困難だった微小なタンパク質結晶からの構造決定。創薬ターゲットとなる膜タンパク質などの解析を加速。

なお、ナノテラスを利用する手順は以下の通りです。

① 財団事務局に申込
② 共創研究所メンバー、PhoSICのコンシェルジュと事前すり合わせ
③ 申込後、最短で1~2か月後に利用開始

なお、ナノテラス利用にあたっては施設利用及びPhoSICのコンシェルジュ支援への対価として下記金額をPhoSICに対し支払う必要があります。

・ナノテラス利用料:1ユニット(8時間)で約61.6万円(7.7万円×8時間)
・試料使用料:1.4万円

これらの費用については当財団が研究助成金とは別に助成者の方々に支援を行います。

今後、助成者のみなさんがナノテラスを利用することで研究がより価値あるものになり、当財団の定款第3条(目的)で目指す「生化学及び有機化学等の分野に係る研究開発に対する助成等に関する事業を行い、科学技術の振興を図り、もって社会経済の発展に寄与」することを願っております。